東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を共有してもらおうと福島県立医科大学などのグループが、国内外の調査報告を元に事故による健康影響についてまとめた論文を発表しました。
被ばくへの不安などによって心の健康を損なうケースが多く見られたとして、今後、各地の原発で防災計画を見直す際には、放射線以外の健康影響にも長期にわたって対応できるようにすべきだとしています。
県立医科大学ふくしま国際医療科学センターの谷川攻一教授らのグループは、事故の教訓を共有してもらおうと、国内の調査報告に加え、国連やアメリカなど海外の報告もあわせて事故の影響をまとめました。
それによりますと、事故による健康影響の中で最も広く確認されたのは、被ばくへの不安や避難生活の精神的な負担などによって、心の健康を損なうケースで、事故直後には避難した住民の5人に1人がPTSD=心的外傷後ストレス障害の疑いがあるとされるなど、深刻な影響があったとしました。
また避難生活自体の影響も大きく、介護が必要な高齢者の死亡率が初めの3か月間で事故前の3倍になり、その後も高い割合が続いたということです。
谷川教授は「住民の不安や避難生活の負担への対応が十分にできなかったことが今回の事故の教訓の1つだ。各地の原発で防災の計画を見直す際には福島での教訓を踏まえ、放射線以外の健康影響にも長期にわたって対応できるようにしてほしい」と話しています。
08月03日 13時34分 (NHK福島放送局)