市民科学者国際会議は、あらゆる政治、経済、イデオロギー、宗教から独立した自由な市民の活動として、東京電力福島第一原子力発電所事故による健康および環境への被害を最少化するための活動に取り組んでいます。放射線の健康影響に関する世界の最新の科学的知見を集め、様々な分野の科学者、被災者、一般市民と情報を共有し、国際的なネットワークを広げてきました。また、放射線防護対策の意思決定を少数の専門家の閉ざされた場で行うのではなく、幅広い関係者がそれぞれの立場を超えて公開の場で議論することが必要と考えます。
これまで私たちは被害者、行政担当者、研究者、市民団体、政府審議会、国際機関の委員などにCSRPへの参加を要請し、第3回会議あたりから、今まで直接議論し合うことが難しかった、立場や思想・信条の異なる科学者等が同じテーブルにつき、建設的な意見交換を行う場が徐々に可能になりました。
しかし、こうした過程で、この会議の前提に関わるいくつかの課題も見えるようになりました。一つは、回を重ねるごとに議論が専門的になり、一般の方々、特に若者や初参加者にとってのハードルが高くなってきたことです。一般市民の放射線防護の在り方を決めるための科学的議論が焦点に近づくほど、多様な声が疎外されざるを得ないという問題にも直面しました。意思決定の過程で「科学」という方法が偏重されすぎているのではないか、さらには言葉の応酬だけで、本当に問題の解決に繋がるのだろうかという疑問も出てきました。
2011年の第1回会議から低線量被ばくの健康・環境・社会影響に関する科学的検証を続けています。さらに、昨年第5回会議で“科学”と、そして“科学的である”ことを問う、新たな試みとして「科学と芸術の狭間」をテーマにしました。近代以前以後の科学、哲学、芸術の関係性を見なおすとともに、原子力・核災害をテーマとした作品に囲まれる中、芸術家と科学者を交えたパネル・ディスカッションを行いました。福島県二本松市で開催する今年の第6回会議では福島現代美術ビエンナーレとの共催を実現し、新たに見えてきたものをより深め、参加者の思考に新しい風が吹くようになればと考えています。
日進月歩で積み上げられる低線量被ばくの影響を示す新たな知見が出てくる中、原発事故に直面した人々の権利と疫学や公衆衛生のあり方をともに考える場として、第6回放射線防護に関する市民科学者国際会議を開催いたします。
10.7(FRI) 15:00~19:00(14:30 OPEN)
映画上映:「KUROZUKA 黒と朱/黒と光/闇の光」(渡邊晃一)、「Lies/Harmony」(グレン・カズマ)、「Trilogy」(岩田渉) ほか14:30-15:00 | 開場・受付 |
15:00-17:00 | 作品上映「KUROZUKA 黒と朱/黒と光/闇の光」(渡邊晃一)、「Lies/Harmony」(グレン・カズマ)、「Trilogy」(岩田渉)、「socialscape : リー”スクラッチ”ペリーの場合」(平井有太) ほか |
17:00-17:45 | 70年続く否定-人工放射能は自然に対しどのように有害か- 基調講演 コルネリア・ヘッセ=ホネガー (サイエンス・イラストレーター) |
17:45-18:00 | 質疑応答 |
18:00-18:45 | ダーウィン主義が信用をなくしているが、そもそもダーウィンは正しかったのか? 基調講演 キース・ベーヴァーストック (元WHO放射線・公衆衛生顧問) |
18:45-19:00 | 基調講演 質疑応答 |
10.8(SAT) 9:30~19:00(9:00 OPEN)
セッション 1. 低線量被ばくの疫学9:00-9:30 | 開場・受付 |
9:30-9:35 | 開会挨拶 |
【セッション1 低線量放射線の疫学】 共同座長:キース・ベーヴァーストック(東フィンランド大学)、セシル・浅沼=ブリス(フランス国立科学研究センター) | |
9:35-10:05 | 原子力施設労働者国際研究プログラム(INWORKS)―低線量の電離放射線被ばくによるがん死亡リスクについての知識の向上― クレルヴィ・ルーロー(フランス放射線防護原子力安全研究所) |
10:05-10:35 | バックグラウンド電離放射線と小児がんのリスク ベン・D・シュピヒァー(ベルン大学社会予防医学研究所) |
10:35–10:50 | 休憩 |
10:50–11:20 | 放射能事故の影響から女性と子どもの健康をまもるための近代的アプローチ ユリア・V・ダヴィドヴァ(ウクライナ国立医学アカデミー 小児科・産科・婦人科研究所) |
11:20–11:50 | 小児期のCTスキャンによる低線量被ばく後の発がんリスク ジョン・マシューズ(メルボルン大学 人口学・国際保健学大学院) |
11:50–12:20 | 質疑応答とディスカッション |
12:20–14:30 | ランチ |
円卓会議 1. 低線量被曝と公衆衛生の課題 | |
14:30–16:30 | ディベートとディスカッション/発表:ウォルフガング・ホフマン(グライフスヴァルト大学医学部地域医療科)、瀬川嘉之(高木学校)、種市靖行(桑野協立病院) ほか |
16:30–17:00 | 休憩 |
17:00–19:00 | ディベートとディスカッション |
10.9(SUN) 9:30~19:00(9:00 OPEN)
セッション 2: 原発事故後の言葉、法、倫理9:00-9:30 | 開場・受付 |
9:30-9:35 | 開会挨拶 |
【セッション 2 原発事故後の言葉、法、倫理】 共同座長:セバスチャン・プフルークバイル(ドイツ放射線防護協会)、島薗進(上智大学 グリーフケア研究所) | |
9:35-10:05 | 原発事故被災者の健康に対する権利とその危機的状況―栃木県からの報告― 清水奈名子(宇都宮大学国際学部) |
10:05-10:35 | 福島第一原発事故と放射線に関する公的な教材および展示施設では,どのような情報が発信されているか 後藤忍 (福島大学 共生システム理工学類) |
10:35–10:50 | 休憩 |
10:50–11:20 | 福島第一原発:時の終わりに抗する終わりの時 セシル・浅沼=ブリス(フランス国立科学研究センター) |
11:20–11:50 | 構造的暴力による社会的虐待:福島原発事故がもたらした精神的被害に関する実証的研究 辻内琢也(早稲田大学人間科学学術院 医療人類学研究室) |
11:50–12:20 | ディベートとディスカッション |
12:20–13:30 | ランチ |
【Session 3 原子力災害後のアート ~科学と芸術の狭間~】 モデレーター 渡邊晃一(福島大学 芸術による地域創造研究所 ) | |
13:30–15:30 | 福島ビエンナーレ 映画上映:「安達が原」(手塚治虫)、「KUROZUKA 黒と朱/黒と光/闇の光」(渡邊晃一) パネル・ディスカッション ヤノベケンジ、コルネリア・ヘッセ=ホネガ―、岡部昌生、平井有太、ほか |
15:30–16:00 | 休憩 |
円卓会議 2. 原発事故後の公衆衛生の枠組み | |
16:00–19:00 | ディベートとディスカッション/発表:土屋智子(特定非営利活動法人HSEリスク・シーキューブ)、ポール・ジョバン(台湾国立中央研究院社会学研究所) ほか |
10.10(MON) 9:00~11:45(9:00 OPEN)
円卓会議とまとめ9:00-9:30 | 開場・受付 |
9:35-11:45 | 円卓会議とまとめ 共同議長:セバスチャン・プフルークバイル(ドイツ放射線防護協会)、島薗進(上智大学 グリーフケア研究所) |
開催日 | 2016年10月7日 (金) ~10月10日 (月・祝) | |
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会場 | 福島県男女共生センター(研修ホール・ほか) | |
所在地 | 〒964-0904 福島県二本松市郭内一丁目196-1 | |
主催 | 市民科学者国際会議 (CSRP) | |
共催 (アルファベット順) |
ドイツ放射線防護協会 (GSS) http://www.strahlenschutz-gesellschaft.de/ |
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福島大学 芸術による地域創造研究所 http://www2.educ.fukushima-u.ac.jp/~koichiw/irc/ |
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福島現代美術ビエンナーレ実行委員会 http://www.fukushima-art.com/ |
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協力 (アルファベット順) |
フォーラム福島 http://www.forum-movie.net/fukushima/ |
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株式会社メディア・ストリーム http://media-stream.jp/ |
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高木学校 http://takasas.main.jp/ |
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協賛
(アルファベット順) |
一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト http://www.actbeyondtrust.org/ |
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特定非営利活動法人 CWS Japan http://www.cwsjapan.org/ |
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大竹財団 http://www.ohdake-foundation.org/ |
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United Methodist Committee on Relief (UMCOR) http://www.umcor.org/ |
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翻訳協力 | 眞下俊樹、西岡まゆみ、TICS | |
通訳機貸出協力 | 原水爆禁止日本国民会議 http://www.gensuikin.org/b/ |