2015年10月23日
津田敏秀博士らは、疫学の科学雑誌であるEpidemiologyの電子版「October 6, 2015」において、原発事故発生時に福島県に住んでいた18歳以下の住民に対する超音波検査を用いた甲状腺スクリーニングについて、既に福島県が公表した2回の検査結果のうち初回のものについて彼ら独自の分析結果を報告しました。1)
彼らは福島県での甲状腺がんの発生率は従来と比較して30倍であり、独自に地域分けした9地域を比較した結果、県内の地域間で2.6倍の差を認めたことは、放射線被ばくの影響が強く示唆されると結論づけています。
これに対して米国ワシントン大学疫学教授のScott Davis博士は、同じ媒体に「Screening For Thyroid Cancer after the Fukushima Disaster: What Do We Learn」と題するCommentary(論評)を投稿し、掲載されました(全文閲覧のための登録は有料です)。以下にその要点を紹介します。
なお、Davis博士はこの論評において、福島県で実施されている県民健康調査の甲状腺検査が、コホート(共通した因子を持ち、観察対象となる集団)として地域に住む人々を追跡調査する科学的研究プロジェクトではないと指摘していますが、県民健康調査の甲状腺検査は、長期にわたって県民の皆さまの健康を見守るための検査であることに加え、低線量被ばくの影響を評価し、そこで得られた知見等を県民の皆さまや社会にお伝えする必要があるとの認識のもと、科学的には、低線量被ばくの影響に関するコホート調査として設計されています。