福島)「国連科学委は非科学的」 元WHO欧州地域顧問

旧ソ連・チェルノブイリ原発事故の健康影響調査などに携わってきた英国出身の放射線生物学者キース・ベーバーストック博士(73)が24日、東京都内で朝日新聞記者の取材に応じた。東京電力福島第一原発事故後のがんの増加に否定的な報告書を出した国連科学委員会(UNSCEAR)を「透明性、独立性を欠き非科学的」と批判し、「解散すべきだ」と訴えた。

博士は取材に対し、科学委が今年4月に発表した福島第一原発事故の影響についての報告書で「被曝(ひばく)によるがんの増加は予測されない」などとしたことに、報告書が掲載している被曝線量でも「がんの過剰発生が予測される」と反論した。

たとえば報告書は事故から約1年半後までに原発敷地内で働いた作業員で10ミリシーベルト以上被曝した人は1万人近くいるとしており、これだけで50人近くのがんが増えると主張した。

科学委の中立性にも疑義を訴えた。理由として、原子力推進計画をもつ国が委員を指名し、科学委に資金提供している▽委員の原子力産業内での雇用履歴が公表されず、放射線リスク評価の際の利益相反がないことの宣誓書が添付されていない――などをあげ、「利権からの独立もなく、科学の名に値しない偏向した報告書だ」と述べた。

博士はWHO勤務時代、原子力を推進している国際原子力機関(IAEA)から「常に介入圧力を感じていた」と語った。福島第一原発事故に関する報告書が公表まで3年以上もかかったことに疑問を呈し、内部情報をもとに「結論を巡る批判やIAEAなど他の国連機関の影響」の可能性を指摘した。

博士はチェルノブイリ事故の被災地での甲状腺がんの増加をいち早く指摘。世界保健機関(WHO)欧州環境健康センターで放射線公衆衛生地域顧問などをつとめてきた。今回、原発事故に関する「市民科学者国際会議」を主催する市民団体の招きで来日した。

本田雅和 2014年11月25日03時00分

http://digital.asahi.com/articles/ASGCR4HRLGCRUGTB002.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_ASGCR4HRLGCRUGTB002