日本学術会議(大西隆会長)は19日、東京電力福島第1原発事故の発生当初のモニタリングデータなど、時間経過に伴い新たに明らかになった情報に基づき、事故に伴う初期被ばくの実態解明を目指すべきだとする内容を盛り込んだ提言を公表した。
提言では、被ばくによる健康影響の解明などに向け、行政や科学者集団に望まれる役割を指摘している。放射性ヨウ素などによる事故直後の初期被ばくはいまだ不明な部分が多いが、提言は、昨年6月に米国エネルギー省の調査に基づくヨウ素線量マップが公開されたことなどを指摘。こうした新たに追加された情報に基づき、当時の放射性物質の放出状況や初期被ばくの状況を再度検討し、結果を県民の健康調査などに反映させるべきとした。
また、事故直後の放射性物質の拡散などをめぐる情報がまだ十分公開されていないとして、政府や研究機関は関連する情報を直ちに公開すべきと訴えた。
県民健康調査は続けるべきとしたが、調査体制の在り方、調査結果の伝え方などについて、住民との対話を踏まえながら不断の改善を図るべきだと指摘。避難者の帰還の判断や除染の目標値をめぐっては、科学者集団が地域の決定、住民の選択を支援すべきとした。
原子力規制委員会の下に府省横断的な学術調査・研究の組織を置き、科学者集団が科学的知見や助言を規制委に提供する仕組みを確立することも求めた。
(2014年9月20日 福島民友ニュース)