東京電力福島第1原子力発電所事故で福島県内に出された避難指示を巡り、政府は12日、放射線量が比較的低い「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」を、2017年3月までに解除する方針を決めた。東電が両区域の住民に支払っている月10万円の精神的損害賠償(慰謝料)は18年3月で終了する。地元からは政府支援の先細りを懸念する声も出ている。
この日、閣議決定した同事故の新たな復興指針に盛り込んだ。被災者に自立を促す狙いがある。安倍晋三首相は官邸で開かれた原子力災害対策本部で「避難指示解除が実現できるよう環境整備を加速し、地域の将来像を速やかに具体化する」と述べ、理解を求めた。
一方、福島県の内堀雅雄知事は同日、解除方針について東京都内で記者団に「(避難地域の)除染や産業再生などを同時に進めなければ成り立たない」と指摘した。
政府は放射線量に応じ、原発周辺の市町村を3段階の避難区域に分けている。17年3月までの解除を目指すのは線量が年20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下の「居住制限区域」と、同20ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」。
対象地区の住民への慰謝料の支払いは18年3月で一律終了する。慰謝料の支払いは解除から1年後に終了するのが原則だが、17年3月より前に避難指示が解除された場合も18年3月まで支払い、解除時期で受取額に差が出ないようにする。すでに避難指示が解除された地域にも適用する。
政府は放射線量が比較的高い「帰還困難区域」の解除時期は明らかにしなかった。
指針には商工業者への営業損害賠償に関する新たな措置も盛った。従来は16年2月で打ち切る計画だったが1年延長して17年2月まで支払い、その後は賠償請求などに個別対応する。政府は官民合同の支援チームを立ち上げ、事業者への個別訪問などにあたる方針だ。
2015/6/13 1:11 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG12H7Z_S5A610C1CR8000/