厚生労働省: 膀胱がん・喉頭がん・肺がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します

報道関係者各位

膀胱がん・喉頭がん・肺がんと放射線被ばくに関する医学的知見を公表します

~労災請求を受け、国際的な報告や疫学調査報告などを分析・検討して報告書を取りまとめ~

厚生労働省の「電離放射線障害の業務上外に関する検討会」(座長:独立行政法人放射線医学総合研究所 米倉義晴理事長)はこのたび、膀胱がん・喉頭がん・肺がんと放射線被ばくとの関連について、現時点の医学的知見を報告書として取りまとめましたので、公表します。

これは、放射線業務従事者に発症した膀胱がん・喉頭がん・肺がんの労災請求(3件)があったことを受け、業務が原因かどうかを判断するために、国際的な報告や疫学調査報告等を分析・検討し、まとめたものです。報告書の概要と、この報告書に基づいた当面の労災補償の考え方は以下のとおりです。

なお、この報告書は、現時点での医学的知見をまとめたもので、新たな労災請求事案については、それぞれ最新の医学的知見に基づいて判断します。厚生労働省では今後とも医学的知見の収集に努めていきます。

 

<検討会報告書の概要>

放射線被ばくによるがんについては、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)が行った医学文献の部位別レビューをまとめた「2006年報告書」と、2006年以降の医学文献を中心にレビューを行った。

 

1 被ばく線量と膀胱がん・喉頭がん・肺がんの発症リスクとの関係

 

(1)膀胱がん・喉頭がん・肺がんに関するUNSCEARの報告や個別の文献で、各々のがんの発症・死亡が統計的に有意に増加する最小被ばく線量について記載されたものはない。

(2)全固形がんに関して、UNSCEARは、被ばく線量が100から200mSv以上において統計的に有意なリスクの上昇が認められるとしている。また、国際放射線防護委員会(ICRP)は、がんリスクの増加について、疫学的研究方法では100mSvまでの線量範囲でのがんのリスクを直接明らかにすることは困難であるとしている。

 

 

2 潜伏期間(放射線被ばくからがん発症までの期間)

 

・UNSCEAR等の知見では、固形がんの潜伏期間は5年から10年としている。

・膀胱がんに関する個別の文献では、放射線治療後5年以降で発症リスクに有意な増加が認められるとするものがある。

 

 

3 放射線被ばく以外のリスクファクター

一般的に、がんの主な発症原因には生活習慣や慢性感染があり、年齢とともに発症リスクが高まるとされているが、各々のがんに関する代表的なリスクファクターは次のとおり。

(1)膀胱がん:喫煙、ベンジジン (2)喉頭がん:喫煙、飲酒 (3)肺がん:喫煙、石綿

<当面の労災補償の考え方>

1 放射線業務従事者に発症した膀胱がん・喉頭がん・肺がんの労災補償に当たっては、当面、検討会報告書に基づき、以下の3項目を総合的に判断する。
(1)被ばく線量
膀胱がん・喉頭がん・肺がんは、被ばく線量が100mSv以上から放射線被ばくとがん発症との関連がうかがわれ、被ばく線量の増加とともに、がん発症との関連が強まること。

(2)潜伏期間
放射線被ばくからがん発症までの期間が、少なくとも5年以上であること。

(3)リスクファクター
放射線被ばく以外の要因についても考慮する必要があること。
2 判断に当たっては、検討会で個別事案ごとに検討する。