Chiyo Nohara, Atsuki Hiyama, Wataru Taira, Akira Tanahara & Joji M. Otaki
Received 17 January 2014
Accepted 22 April 2014
Published 15 May 2014
A massive amount of radioactive materials has been released into the environment by the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident, but its biological impacts have rarely been examined. Here, we have quantitatively evaluated the relationship between the dose of ingested radioactive cesium and mortality and abnormality rates using the pale grass blue butterfly, Zizeeria maha. When larvae from Okinawa, which is likely the least polluted locality in Japan, were fed leaves collected from polluted localities, mortality and abnormality rates increased sharply at low doses in response to the ingested cesium dose. This dose-response relationship was best fitted by power function models, which indicated that the half lethal and abnormal doses were 1.9 and 0.76 Bq per larva, corresponding to 54,000 and 22,000 Bq per kilogram body weight, respectively. Both the retention of radioactive cesium in a pupa relative to the ingested dose throughout the larval stage and the accumulation of radioactive cesium in a pupa relative to the activity concentration in a diet were highest at the lowest level of cesium ingested. We conclude that the risk of ingesting a polluted diet is realistic, at least for this butterfly, and likely for certain other organisms living in the polluted area.
http://www.nature.com/srep/2014/140515/srep04946/full/srep04946.html
Nohara et al. (2004) Scientific Reports 4: 4946. DOI: 10.1038/srep04946
http://www.nature.com/srep/2014/140515/srep04946/full/srep04946.html
The biological impacts of ingested radioactive materials on the pale grass blue butterfly
野原千代 1、檜山充樹 1、平良渉 1、棚原朗 2、大瀧丈二 1
1 琉球大学理学部 海洋自然科学科 分子生理学 BCPH Unit、
2 琉球大学機器分析支援センター
概要
福島第一原子力発電所の事故により、膨大な量の放射性物質が環境に放出された。しかしながら、それらが生物に及ぼす影響については、ほとんど調査されていない。そこで我々はヤマトシジミ(Zizeeria maha)を用いて、放射性セシウム摂取線量と死亡率、および異常率との関係を定量的に評価した。日本国内で最も汚染が低い地域である沖縄からの幼虫に、汚染区域で採集した食草を与えたところ、セシウム摂取線量に対応して、死亡率と異常率が低線量域 において急激に上昇した。この線量反応関係は、べき関数モデルに最も適合し、そこから示される半致死線量と半異常線量は、幼虫 1 個体に対し 1.9 と 0.76 Bq、体重 1 kg 当たり 54000 と 22000 Bqであった。幼虫期を通じて摂取された放射性セシウムに対する蛹内の放射性セシウム残留率、および、食物内のセシウム放射活性濃度に対する蛹内の放射性セシウム蓄積率は、いずれもセシウム摂取レベルが最も低い場合に、最も高い値を示した。我々は、少なくともこの蝶にとっては、汚染された食物を食べる危険性は実在し、また、汚染区域に棲息するいくらかの他の生物に対しても危険性があるだろうと結論付ける。
はじめに
福島第一原子力発電所(NPP)の崩壊により環境中に放出された人工放射性核種の調査は、しばしば汚染区域の環境サンプルや、土壌、森林の腐葉土を用いて行われている。また、野生生物や家畜の体内、農作物中に蓄積された放射性核種に対する記録も行われている 。しかし、野生生物の健康や病に対する汚染物質の生物学的影響ついては、十分な調査が行われていない。 野外調査から、昆虫個体数、特に蝶の数が減少していることが分かった。これは汚染が蝶にとって致命的な影響力を持つことを示唆している。別の研究からは虫瘤形成アブラムシにおける形態異常が高い率で発生していることが明らかにされている 。これらの研究結果と一致するように、我々は汚染区域のヤマトシジミ(Zizeeria maha)が、恐らく福島第一原子力発電所から放出された人工的放射性核種による生理的、遺伝的な影響を受けていることを証明した。一連の研究を通じて、我々は独自の標準飼育法 のもとで、食物中(つまり、食草の葉、カタバミ) の放射性セシウムのレベルに相関して蝶の生存率が低下することを明らかにした。この実験では、食草は異なる汚染レベルを示す5地区から採取され(宇部、広野、福島、飯舘平野部、飯舘山岳部)(Table 1)、研究室内で最も汚染レベルが低いと思われる沖縄の野外から採集された雌の幼虫に与えられた。しかしながら、幼虫が食べた食草量、人工放射性セシウム摂取線量の測定は行われていない。更に、蛹の中に保持、蓄積された放射線量についても調べられていない。 今回の研究では、幼虫が生存期間に摂取した放射性セシウム量を定量化した。これらのデータにシンプルな数学モデルを当てはめ、放射性セシウム摂取による 50%死亡率および 50%異常率が得られた。更に、どれくらいの放射性セシウムが蛹の中に保持、蓄積されたか計量した。最後に、汚染区域に生息する蝶、それ以外の生物が汚染された食物から受けうるリスクについて議論した。