【オーストリアで紺野正人記者】脱原発・廃炉対策などを調査する県議会の海外行政調査団(A班)は14日、ウィーンの在ウィーン国際機関日本政府代表部を訪れ、小沢俊朗大使らと意見交換した。小沢大使は、東京電力福島第一原発を受けて国際原子力機関(IAEA)が作成している「福島報告書」が、来年3月の理事会に提出される見通しを示した。
福島報告書は、平成24年9月のIAEA総会で天野之弥事務局長が作成を表明していた。理事会への提出後、来年9月の総会での承認を経て公表されるとみられる。
国内では、既に政府事故調や学会事故調など5つの報告書が公表されている。IAEAの報告書は本県の現状を、より客観的に世界に発信すると期待される。
意見交換は冒頭を除き、非公開で行われた。原発事故後、本県を4度、訪れている小沢大使は「ウィーンは、ニューヨーク、ジュネーブに次ぐ第3の国連都市。特にIAEA関係の活動に力を入れている」と述べた。調査団の斎藤勝利団長(自民党)は「IAEAをはじめ、国際機関の窓口として福島県の原子力災害からの復興に特段の協力をお願いしたい」と求めた。
代表部は、IAEAの他、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)など9つの国際機関の日本の窓口となっている。
■IAEA訪れ支援・助言要請
調査団は14日、ウィーンのIAEAを訪問し、原子力エネルギー局核燃料サイクル・廃棄物技術部長のファン・カルロス・レンティッホ氏、原子力科学・応用局ヒューマンヘルス部長で福島医大との協力プロジェクトを担当しているレティ・キース・チェム氏と意見を交わした。
冒頭を除き非公開で行われ、原発事故以降、除染や廃炉の調査などで本県を訪れているレンティッホ氏は「さまざまな面でサポートしていきたい」とあいさつした。調査団の斎藤団長は「IAEAの支援や助言なくしては事故の収束は望めない。今後ともよろしくお願いしたい」と協力を求めた。
調査団によると、レンティッホ氏は意見交換で「避難者の帰還のため、正しい情報を公開し、意見交換していくことが大事だ」と語った。さらに、原子力災害からの復興に向けた本県の現状について「事故直後から見ると、大変な進展が見られる」と述べたという。
■駐オーストリア竹歳大使と懇談
調査団は15日、ウィーンの在オーストリア日本大使館を訪れ、竹歳誠大使と懇談した。竹歳大使は「福島第一原発の汚染水問題が大きく取り上げられているが、正しく情報を理解してもらうよう努めたい」と述べた。
一行は懇談後、帰路に就いた。16日に帰国する予定。
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