私たちは今日,どこまで 許容するのか?/ How many additional deaths do we accept today?

市民科学者国際会議実行委員会

今年で3 回目となった市民科学者国際会議(以下,CSRP)は,10 月13,14 日にかけて行いました。この2 年半のあいだに福島原発事故をめぐる日本の状況は,放射能汚染から人々の目をそらそうとする/そらせていく方向に大きく変化し,行政府,産業界,そして特に国際機関は放射線の身体影響をさらに過小評価しようとする動きを強めています。図らずも,前日の12 日には,福島県内33 市町村のみを対象地域とする「子ども被災者支援法」の基本方針が閣議決定されています。被災者を「一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住し,又は居住していた者」とした法の精神,「年間1 mSv(ミリシーベルト)を目標に」という立法者である超党派の議員たちの意思や,立法から基本方針策定までの道のりを支えてきた影響地域の住民,支援者,そして,高濃度のホットスポットがあり「支援対象地域」指定の要望を続けてきた東北,関東地方の住民,自治体の声を無視した形で,この決定はなされました。2 日間にわたるCSRP では,初日にレクチャーを主とし,2 日目の午前中はQ & A を中心としたワーキングセッション,午後からは円卓を囲んでのディスカッションが行われました。この論考では,円卓会議の冒頭に,共同議長のセバスチャン・プフルークバイル博士から提起された論旨について,深めてみたいと思います。

『科学』(岩波書店) 2014年3月号